イスラエル博物館所蔵 ~印象派・光の系譜~
三菱1号館美術館で開催されている、イスラエル博物館の蔵出し展示会を見て来た。
コロナ禍の中、一人で来ている人がほとんどで、展覧会を真剣に楽しもうという空気が感じられる。この会場には何度も訪れいるが、他の会場には無い、独特な雰囲気が有る。展示会場を繋ぐ廊下や階段は木造で、それ自体が美術作品として通用しそうな趣がある。明治時代に当時としては大型洋風建築として鳴り物入りで建造され、2009年に現存する姿に建て替えられた。この建造物を美術館にしようと考えた発想が素晴らしい。西洋美術を日本人に見せたいと言う三菱財閥の気概が感じられる。
イスラエル美術館は膨大は作品を所蔵し、印象派に先駆けたコロー、クールベ、ブーダン、そしてモネ、ルノワール、シスレー、ピサロ、ポスト印象派のセザンヌ、ゴッホ、ゴーガン、さらにナビ派のボナールやヴュイヤールの作品約70点を厳選して披露。印象派の歴史をなぞるかのようだ。
そんな中で、私の心を射止めた作品はレッサー・ユリィの『夜のポツダム広場』。濡れたアスファルトに映る柔らかい光が、夜の闇とのコントラストで眩いばかりに浮き上がる。圧巻の光の表現力に、暫く足を止めた。日本ではあまり知られていないユリィだが、ヨーロッパでは評価の高い実力派。今回は、この作家を知っただけでも来た価値が有ったとさえ思う。セザンヌやゴッホなどのスーパースターのフルスイングを見るのも楽しいが、いぶし銀の技巧派を見つけるのも展覧会の醍醐味だ。
その他、ゴッホの『プロヴァンスの収穫期』、モネの『睡蓮の池』など初来日作品が多く、豪華なラインナップ。光の系譜というわかり易いテーマを、ストレートにぶつけて来た主催者のプロフェッショナルな仕事に感謝だ。