比叡山から京都 ~仏像と襖絵を巡る旅~

以前から行きたいと思っていた比叡山への巡礼の旅を実現した。比叡山は最澄が開いた天台宗の聖地で、あまた宗教家の修行の場である。法然、親鸞をはじめ、道元、日蓮など開祖と言われるような重鎮が、いち僧侶として修行や思索の時間を過ごしている。いわば虎の穴というべき場所だ。
早朝に東京を立ち、京都からJR湖西線で15分ほどで比叡山坂本駅に到着。そこからロープウェイで延暦寺に向かう。ガイドブックでは、駅からロープウェイまで近いように書かれているが、意外に遠い。バスで行った方がよいかもしれない。とわいえ、途中に見事な桜並木があり、歩くのも悪くない。ロープウェイは世界最長らしく乗りごたえ十分。眼下に見え隠れする琵琶湖や、恐怖を感じるような崖、真っ暗なトンネルなどあきさせない。ほどなくして終点に着くと、地上より体感的に寒く感じる。そこから暫く上ると、延暦寺の入り口が見えてくる。延暦寺は東塔、西塔、横川と3つの地域に分かれており、その間が離れている。歩いて歩けない距離ではないが、坂道であり楽ではないらしい。散策というより登山といった方が適当だろう。

東塔の見どころは根本中堂。残念ながら改修工事(~2028年頃)真っただ中で、本堂が建材に覆われ見ることが出来ない。仏間には入ることが出来るので、お参りは可能だ。代わりに、工事用に作った足場から工事の進捗状況を伺うことが出来る。本堂の屋根と、回廊の屋根を真上から見ることが出来てその細かい意匠に感動する。東塔区域には宝物殿があり、延暦寺収蔵の仏像が展示されている。根本中堂の御本尊である薬師如来坐像、不動明王二童子立像、千手観音立像など見事な仏像を拝むことが出来る。

続いて、西塔へバスで向かう。バスはシャトル便になっていて、30分間隔で各地域を循環してくれる。カーブの多い急坂で、首が重力と戦うこと5分で目的地に着く。西塔は親鸞や日蓮が文字通り修業した場所であり、森林により育まれた濃密な空気と静寂が体を包み込む。下界から切り離され、霊界に導かれるような神秘的な世界が広がっている。本堂は釈迦堂で、堂内に入り釈迦如来を拝むことが出来る。更に、最澄上人の御廟所である浄土院などがある。

最後は横川。バスで10分ほどの距離にある。本堂は横川中堂で、参道から見上げるような位置にあるので、浮かんでいるかのように見える。とても美しいお堂だ。参拝した後、分岐点に戻りもう一方の道を恵心堂に向かう。恵心僧都源信が『往生要集』を著したとされる道場だ。平日ということも有ってか、人っ子一人おらず、うら寂しいというのが第一印象であった。親鸞の師匠でもある源信だが、修行中も寂しく一人で過ごしたのか、それとも沢山の弟子と賑やかに過ごしたのかと想像しながら帰途についた。
今日は京都市内のホテルに泊まり、明日は京都の仏像と襖絵を巡る一日だ。