メトロポリタン美術館展 ~西洋絵画の500年~
桜の開花もまもなくだと言うのに、季節外れの寒波が訪れた平日の午後、楽しみにしていたメトロポリタン美術館展に行ってきた。寒さに二の足を踏まれたのか、この日の来場者はまばらで鑑賞にはうってつけ。人の多い美術展ほど興ざめなものは無い。
さて、メトロポリタン美術館は世界最大とも言われる美術館で、所蔵する美術品の数が300万点と言いから想像もできない規模。ニューヨークのマンハッタン、セントラルパークの片隅に鎮座してアメリカの美術界を牽引する存在であり続ける。この一等地にして、国立でも州立でもない私立であることが驚くべきこと。アメリカの民間人の財力と意識の高さが伺える。
今回のテーマである西欧絵画の500年を平面に並べ、テーマ毎(年代毎)に区切って展示する志向はわかり易い。私の全体を通しての感想は、「まあこんなもんでしょう(^^)」という感じ。しかし、そんな中でも、何点かは足を止める作品に出会えた。
まずは、ウイリアム・ターナーの『ヴェネツィア、サンタ・マリア・デッラ・サルーテ聖堂の前廊から望む』。水と空の描写が素晴らしい。運河の透明度が見事に表現され、船体が水面に映り込み、ただでさえ美しい街に彩りを加えている。雲の表情も豊かで何時までも見ていたい。
ジョルジュ・ド・ラ・トゥール『女占い師』。淑女たちの会話が聞こえてくるようだ。占い師の、いかにも胡散臭い表情がユーモラスで思わず笑ってしまう。ラ・トゥールは、『聖ヨセフ』に代表されるような明暗を強調する技巧派の画家。神秘性を感じる画風を特徴とする。この絵も背後のほの暗い壁の陰影で疚しさのを感じさせる意図が見える。
続いて、フランソワ・ブーシェの『ヴィーナスの化粧』。眩いばかりの白い肌が目に付くこの作品は、ルイ15世の公妾ポンパドゥール夫人の依頼で書かれたと言われ、ベルサイユ宮殿に飾られていた。豪華なカーテンと丁度品がバランス良く配され美しいハーモニーを奏でる。
その他、フェルメール、ドガ、ルノワールなどビックネームが競演する。豪華な展覧会だ。