大桟橋
日本大通り駅を降りると目の前には西洋建築の茶色い建物が姿を現す。
キングの異名をとる神奈川県庁舎。古さと新しさが混在する、
エキゾチックな官庁街が観光客の目を楽しませる。
交差点を渡って県庁を左に見て進み、明るいテラスを通り抜けると目の前に
白い船体が忽然と姿を現した。
青い空に映える白い船体が眩しい。
飛鳥Ⅱは日本が誇る豪華客船。アバンギャルドな姿態が気品と優雅さを湛えている。
暇と時間を持て余したハイソな客人を手厚く持て成す。観光旅行の王道。
ただ、今はコロナ禍の逆風が文字通りその進行を阻んでいる。
しかたがないこととは言え、ダイアモンドプリンセス号の顛末はあまりにも深い傷。
飛鳥はその傷を癒すかのように静かに体を休める。
大桟橋のプラットホームに上ると、客室と同じ様な目線になる。巨大な船体が実感を
持って迫ってくる。船員も当然ながら乗客の姿も見えない。
ふと、今来た道を振り返ると、空母の滑走路のようなフローリングが開放的に広がり
走り出したくなる。大桟橋とは言い得て妙だ。
貴婦人の顔を見に船体の前方に回り込むと、近代的な高層ビル群の間から夕陽が沈むのが
見えるた。その美しさに思わずシャッターを切った。